パン買いにいくか

  • 2013.10.30 Wednesday
  • 12:50
 最近やっと涼しくなってきたので、良かった。いつもの如く僕は下北沢のアパートで小説を書いていた。昼からずっと集中したので、12枚ほど書けた。時計を見ると5時である。おお、結構、進んだ。一休みするか。
 僕は流し台でコーヒーを作ってベランダへ出た。タバコに火をつける。
 スズナリの前にレトロなロングドレスの女性がいた。姿勢が良く髪型のくっきりとした人だな、と思って見ていると劇場から出てきたお客さんに挨拶している。ふーん女優さんか。
 僕はコーヒーを飲む。スズナリ横町の焼き鳥屋の外座敷では客が一杯やっている。煙香の漂う下北沢の夕方であった。
「パン買いにいくか」
僕は千円札を1枚ポケットに入れて下北沢の街へ出た。
 バスの停車場脇の小道を南口商店街へ歩いた。道の左側には、また焼き鳥屋がある。下北沢の南口は焼き鳥銀座だ。この店は立ち飲みセットが750円である。お通しとビールに焼き鳥4本。ごっくん、咽喉が鳴るがここは我慢する。まずはパン屋へ向かうのだ。早くしないと売り切れになってしまう。
 店に到着すると、カレーパンは残っていた。いつものパン屋のアンゼリカである。さらにそぼろクリームパンもある。おお、今日はついているな。さらにシュークリームも買っちゃおうかなー、でも300円と高いので我慢しよう。
「よし。パン買えたぞ」
僕はビニールをぶら下げて南口商店街を歩いた。足が軽い。袋にはカレーパン2つにそぼろクリームパン1つが入っている。カレーパンはルーがたんまりと入っているので、なかなか重みがあるのである。充実感を持って歩いているみたいだ。それは村上春樹さんの言う小確幸(小さな確実な幸せ)か。
 ところで僕はパン生地がぼそぼそしているカレーパンは嫌いだ。衣がサクッと揚がっていて、パン生地は薄くてもっちりが理想である。そこへスパイスの効いたコクのあるルーが絡んでくれるカレーパンが好きだ。アンゼリカのカレーパンは僕の理想のカレーパンでもある。
 1つ食べようっと。僕は道端でビニールからカレーパンを取り出した。ぱくっと一口。もぐもぐ。もぐもぐ。このカレーパンは本当に旨い。その上、買い食いすると何倍も旨い。僕はカレーパンを片手に街を歩いたのであった。
 そして下北沢はこういう時にちょっと腰を下ろして食べたり飲んだりできるスペースのある街だ。それは公共の施設ではなくて、個人の商店やビルが自腹を切って用意しているスペースである。僕は本多劇場の裏階段を上がるとヴィレヴァン裏口の自動販売機で缶コーヒーを買いベンチに座った。ここには灰皿もある。僕はカレーパンを食べる。もぐもぐ。缶コーヒーを飲む。タバコに火をつける。ふー。小確幸。
 ヴィレヴァンに入ると、文学コーナーで穂村弘の新刊を見つけた。欲しいな。僕はポケットをまさぐると、残りは260円であった。次に漫画コーナーでイムリの13巻を見つける。しまった、棚移動していたものだから分からなかったが、裏表紙を開けば3か月も前に発行されているじゃないですか。
 物欲は爆発するが、お金は全然足りない。
 仕方がなく僕は裏口を出て、とぼとぼとアパートへ向かったのであった。小道を行くと、古本屋があった。
 森茉莉の文庫本が180円で売っている。おお。
 アパートに帰った僕はカレーパンをくわえて、万年床に転がった。森茉莉のエッセイを読む。カレーパンをかじる。もぐもぐ、もぐもぐ。昭和の時代に森鴎外の娘の森茉莉さんは下北沢に住んでいたようである。


JUGEMテーマ:日記・一般


コメント
コメントする








    
この記事のトラックバックURL
トラックバック

calendar

S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< November 2018 >>

selected entries

categories

archives

recent trackback

recommend

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM