アクセル全開。それは決定事項 (タイシリーズその8)
- 2014.06.12 Thursday
- 13:12
タイのパタヤにいる。
「ここで諦めたら、二度とマリンジェットに乗れないな」
僕はヤマハの102馬力のハンドルをギュッと握っていた。
今、別れたら、それは今生の別れとなる。大仰な物言いではなく40余年生きた実感である。若くないから、次はないのだ。
そんなの悔しい。
しかし、さっきから海にぷかぷか浮いているのだが、なんとなく船体が安定してきている気がする。シートを内股で強く挟み込んで、腰をリラックスしてみる。スポーツジムの乗馬マシンと同じ感じだ。おお、何とか停船していられるではないか。
僅かだが気持ちの余裕ができたら、急に視界が広がった。
そこは青い海であった。波もなく、オフ・ショアの風がゆるやかに吹いている。そして見渡す限りの海と、僕とマリンジェットだけ。
「なんてこと」
とてもチャーミングな南国の海だった。
そう言えば噂では、東京湾は渋滞になるらしい。水上バイクによる東京横浜間のツーリングが人気だそうである。湾内の水上バイクの航路は制限されているので、夏季には狭い水路で渋滞が起こるというのだ。
神田川でノロノロ運転するところを想像する。水上バイクがぎっしりと並んでいる。脇見をすると右岸も左岸も、黒ずんだコンクリートの壁である。ガードレールの向うにハイエースが走っている。ああ、いやだ。僕は川とか池とか、そんなジェットに憧れたのではない、海、それも絶対、南の海。パールのネックレスみたいに、南の島を突っ走る。マイ・オールブルー。
「今、夢のようなところにいる」
立ち直りのきっかけは、忙しない小商売人みたいで情けないのだが、僕の思考は前へ向いた。スポーツ選手のメンタルトレーニングを思い出した。この状況だと、こけたくないと思うから、怖いのだ。こけてもいい、いや、むしろ一回ぐらい豪快にこけてみよう、とイメージする。そしてあっちの岩まで、アクセル全開。それは決定事項であり、絶対にアクセルを緩めない、と決めたのであった。
さあ、後はやるだけである。
「うおおおお」アクセル全開。
恐怖からの解放、そして自由、きらきらした海面、咆哮する102馬力のエンジン。
日本に帰ったら免許取り直し。うほほ。
「ここで諦めたら、二度とマリンジェットに乗れないな」
僕はヤマハの102馬力のハンドルをギュッと握っていた。
今、別れたら、それは今生の別れとなる。大仰な物言いではなく40余年生きた実感である。若くないから、次はないのだ。
そんなの悔しい。
しかし、さっきから海にぷかぷか浮いているのだが、なんとなく船体が安定してきている気がする。シートを内股で強く挟み込んで、腰をリラックスしてみる。スポーツジムの乗馬マシンと同じ感じだ。おお、何とか停船していられるではないか。
僅かだが気持ちの余裕ができたら、急に視界が広がった。
そこは青い海であった。波もなく、オフ・ショアの風がゆるやかに吹いている。そして見渡す限りの海と、僕とマリンジェットだけ。
「なんてこと」
とてもチャーミングな南国の海だった。
そう言えば噂では、東京湾は渋滞になるらしい。水上バイクによる東京横浜間のツーリングが人気だそうである。湾内の水上バイクの航路は制限されているので、夏季には狭い水路で渋滞が起こるというのだ。
神田川でノロノロ運転するところを想像する。水上バイクがぎっしりと並んでいる。脇見をすると右岸も左岸も、黒ずんだコンクリートの壁である。ガードレールの向うにハイエースが走っている。ああ、いやだ。僕は川とか池とか、そんなジェットに憧れたのではない、海、それも絶対、南の海。パールのネックレスみたいに、南の島を突っ走る。マイ・オールブルー。
「今、夢のようなところにいる」
立ち直りのきっかけは、忙しない小商売人みたいで情けないのだが、僕の思考は前へ向いた。スポーツ選手のメンタルトレーニングを思い出した。この状況だと、こけたくないと思うから、怖いのだ。こけてもいい、いや、むしろ一回ぐらい豪快にこけてみよう、とイメージする。そしてあっちの岩まで、アクセル全開。それは決定事項であり、絶対にアクセルを緩めない、と決めたのであった。
さあ、後はやるだけである。
「うおおおお」アクセル全開。
恐怖からの解放、そして自由、きらきらした海面、咆哮する102馬力のエンジン。
日本に帰ったら免許取り直し。うほほ。
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