男が結婚に踏み切る瞬間

  • 2015.02.10 Tuesday
  • 14:12
 男の心理として、結婚を決意するにはかなりの覚悟がいると思う。どうしたって先のことを考えるし、大切な約束であるわけだから。
 しかしそういうことをえらい気楽に考えている男もいるわけで、女性に出会うと開口一番「結婚してくれ」と口説きはじめる男がいる。彼の名前はジョルジョ。
「俺と結婚してくれ」
「冗談言わないで。私達、さっき出会ったばかりじゃない…」
ジョルジョは背の高い男で、栗毛でしなやかな体躯をしている。ぴったりとしたシャツの胸元からはいい香りがする。彼の服装は軽やかだ。そして清潔で社会的。いい革底の靴を履いている。
 そういうセンスは子供の頃に身に着けたのさ、と彼は言う。ジョルジョの母親は名のある家族の血を引いていたそうだ。
「結婚してくれ、というのは本気なのか?」
「ああ、本気だ」
ジョルジョは僕たちの中で人気があった。大男で、いつも金払いが良く、約束は必ず守る男だった。なにしろバーで男共が集うと、彼の女話を聞くのが最高だった。
「いつもそうやって女を口説いているの?」
「そうだ」
「もし後で、やっぱり結婚したくない、と思ったらどうするんだ?」
「結婚するのはやめよう、と切り出すのさ」
「ケンカになるんじゃないの」
「ああ、撃たれたことがあるな」
ジョルジョはビールを飲み干した。袖を上げると古傷があった。彼は大きな手でバーテンダーにもう一杯ビールを頼んだ。
「どんな女と結婚したいんだ?」
「それを俺はずっと考えてる」
「美しい女だろ。ジョルジョの元彼女は美人ばっかりだからな」
「結果的には美しい女を選んでいるかもしれない。だが美自体はそれほど重要ではない」
「じゃ何が重要なんだ?」
「美のエレメント」「崇高な」
僕は吹き出してしまった。黒ビールの泡が鼻に入った。
「崇高な美のエレメントを持つ女性、というのは言葉としては成立するけど、良くわからないな。もうちょっと具体的に説明してよ」
「荒れているブロンドは嫌いだ」
「そういう女性は美しくない、ということ?」
「外見もそうだが、その結果を生む内面性が許せない」
「確かに無理やりブロンドにしている女は多いよな」
僕は鼻を拭った。
「毛が何色か、という問題ではなく、自然が荒廃していくのにブロンドにしようとする精神性を疑う」
「じゃあ自然でとても綺麗なブロンディは?」
「いいね」
「結婚してもいいと思う?」
「ああ、悪くない」
ジョルジョはパイントを傾けた。眉間が繊細だった。



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