夜の買い出しとカラシニコフ

  • 2017.01.04 Wednesday
  • 19:32
 僕はロシアのハバロフスクにあるカリニナ通りのアパートにいる。夜の10時、外気温はマイナス28度。
「今年はそんなに寒くない」
地元のロシア女子の一言である。
 冷蔵庫をのぞくと、飲み物がなかったので、気合いを入れて、近くのスーパーマーケットに買い出しだ! よし、行くぞ! ということでヒートテックのボディスーツ、ジーンズにブーツにパタゴニアの3レイヤーのジャケットとビーニーで重装備をした。
 アパートはまず重々しい2重ドアである。3つの鍵が必要だ。そして暗い階段を降りると、鉄のドアがある。内側からはグリーンのボタンを押すと開くようになっているが、外側からは、特製のマグネットキーか暗証番号が必要である。セキュリティーが日本とは桁違いに重い。
 外に出る。
 さ、寒い。頬が切れそうじゃないの。それに足元の全てが凍っているのだ。つるっと滑りそうで怖いのであった。
 僕はマイナス28度のカリニナ通りを買い出しのためにそろそろと歩いていた。5分ほど歩くと、一番近いスーパーマーケットに到着した。
 小さなスーパーだが、明るい店内で、商品が整然と並べられている。オレンジとグリーンを基調にした店舗デザインで、日本のセブンイレブンよりも明るくてカラフルである。ロシアもどんどん変わっています。
 ザクロとラズベリー入りの飲むヨーグルトを買う。こういうのは日本では絶対に買えない。洋ナシ入りのヨーグルトも旨そうだ。紅茶はリプトンしか置いていない。そしてレモンを一個、ミネラルウオーター。物価は日本より少し安い感じか。飲むヨーグルトは500mlで90円だからこちらの方が安い。まあ街のセンターで夜の営業もしているコンビニエンス・スーパーマーケットなのだから仕方がないであろう。成城石井よりは圧倒的に安いのであった。
 さあ、マイナス28度の帰り道である。電灯が少なくて、道が広いので、心もとない。露出している頬はやっぱり切れそうな感じがする。
 パパパン、パンパンパン、パパパパン。ゲゲ、結構遠いが、銃声がするじゃないの。それも連発だからマシンガンだ。カラシニコフだよ。おっかないなー、もし狙われたらひとたまりもない。
 夜のカリニナ通りは大丈夫だと思うけど、頭のおかしい人がいるかもしれないから、気をつけてね、と奥さんに言われたのを思い出した。なんで普通の街なのに夜になるとカラシニコフをぶっ放している人がいるんだろう。正月だからかな。まったく爆竹みたいに実弾撃つのは本当にやめてほしいよな、危ないじゃないですか。ちなみにカラシニコフとは世界で最も性能が良く、安価なロシア製マシンガンである。アメリカ人でもこのマシンガンを高く評価する人は多いのだ。
 僕は小走りでアパートへ向かったのであった。そしてアパートの建物に飛び込んだ。転ばなかったし、撃たれなかった。よかった。
 
 さあ、まずは水を飲もう。ボン・アクアというミネラルウオーターである。ぐびび。まあまあ旨い。そしてせっかくロシアにいるのだから、暖かいレモンティを作ることにした。リプトンの紙パックを濃いめに淹れて、角砂糖を放り込む。角砂糖のパッケージデザインは赤くてかわいい。そして、レモンを三角に切って入れる。あくまでセコイ感じだ。たくさん入れてしまうとロシア風ではないのである。
 ズズー。うーん。まあ、普通の甘いレモンティだ。味は特に変わらない。しかしアパートの中を少し移動して、テラスに出る。いきなりマイナス10度以下の世界である。このテラスで飲む暖かいレモンティは、俄然、トロッとして輝きを増し、そしてロシア風にとても旨いのである。
 ここでロシアのアパートの構造について説明する必要があると思う。共産党時代のアパートは一人20平米を目指して設計されたらしく、40から50平米のアパートが多い。日本でいうと2Kのアパートが多い。ドアを入るとバスルームがあり、キッチンがあり、部屋が2つ並んでいる。快適だが、広々としているというほどではないので、建物の外側に3平米ほどのテラスを増設しているアパートが多い。テラスは腰板とガラスに網戸のスタイルが一般的である。しかし、頑強なコンクリート造りの外側なので、夏は蚊除けだけ考えればいいのだが、問題は冬をどうするかである。外はマイナス30度以下になることもあるのだ。だから5センチの厚みの木の2重のドアがついている。人が一人やっと通れるぐらいの幅だ。部屋の中は温水暖房で28度くらいのホカホカになっている。2重のドアを開けると、ひゅうう、と冷気の音がする。
 そしてなんでそんなところで飲まなければいけないのかというと、それはやはりスモーカーだからである。スモーカーには最高の場所なのだ。
 ということで僕はカリニナ通りのアパートで、暖かいレモンティを飲みながら、手巻きタバコをやるのであった。窓を開けると、マイナス28度の外気が音を立てて、テラスに侵入してくる。ものすごい迫力であり、食べかけのアイスクリームを置いても、全く溶けていかないのであった。
 

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